テレパシー
そんなわけで、みかんのばあちゃん好き好き大作戦が成功して、とーちゃんたちは旅行に出発した。
ボクたちはと言えば、美味しいカリカリと清潔なトイレでいつも通りの食っちゃ寝の暮らし。やっぱり「イヌは人に、ネコは家につく」って言葉は正しいと思うんだ。
とーちゃんが若い頃は海外に出ると、旅先から国際電話をかけない限り連絡を取る方法がなかったけど、今はいつだってSNSで連絡がつくので、ばーちゃんも何かわからないことや不安なことがあればすぐにスペインのかーちゃんと連絡し合ってた。
そうそう、うり姐さんに聞いたんだけど、ちーちょ兄さんは超能力があって、旅に出たとーちゃんたちが何をしてるかを何となく判ったらしいんだ。
とーちゃんたちが屋久島に10日間の旅に出た時、ちーちょ兄さんは9日目までエサを食べなかったんだけど、どうして9日目に食べることにしたの?ってうり姐さんが聞いたら、ちーちょ兄さんはこう答えたんだって。
『とーちゃんたちが家に帰り始めたからさ。』
とーちゃんが獣医さんに尋ねたら、ちーちょ兄さんがエサに口を付けた時刻ととーちゃんが鹿児島行きの高速船に乗った時刻がぴったり同じだったそうだ。
ま、そこまでじゃなくても、ボクらもかーちゃんが帰って来るのは何となく予感があって、みかんと一緒に玄関で正座して待ってることが多い。
どれぐらい前からだって?
う〜ん、日によって違うけど、かーちゃんのクルマのエンジンの音にとーちゃんが気付く10分ぐらい前かな?
クルマで10分って言えばかーちゃんがスーパーから出る頃だから、ニンゲンからすればボクらも超能力があるってことになるのかもね。