カントク
10月になって、ボクのトイレ広場が慌ただしくなった。
前にも言ったと思うけど、ここには”ガレージ“というクルマのおうちが建つらしい。
ボクが新しいウッドデッキで日向ぼっこをしている間も、大工さんがやって来て作業を進めて行く。
とーちゃんは昼間仕事に行っていて留守なので、ボクが代わりにその様子を眺めている。
大工さんたちは、そんなボクのことを"カントク"って呼ぶんだ。
大工さんは休憩の時、ニコニコしながらボクに話しかけ、時には甘いお菓子のかけらをくれたりしてとても可愛がってくれる。
これまでニンゲンは怖いものだと思ってたけど、そうじゃないニンゲンもいるんだなって思った。
夕方になるととーちゃんが帰って来て、広場のボクのウンチを片付けた後、薪割りをする。
ボクはとーちゃんのそばでそれを見守る。
時々木が飛んでくるけど、ボクが上手にかわすと、とーちゃんが大きな声で笑う。
『反射神経良いんだな、相棒!』
ボクに”カントク“と”アイボウ”という新しい名前が付いた。