痩せっぽちだったボク

f:id:Noranekojiro:20171208112936j:image

お昼過ぎ、クロネコさんがやってきて、何やら小包を届けてくれた。
かーちゃんはイソイソと包みを開け、『ほら!』って、真っ先にボクに見せてくれた。
あ”っ!ボクじゃん。

今日届いたのは高原鉄男さんの絵。
お正月のある日、とーちゃんとかーちゃんはボクの写真を手に彼の展覧会に行った。
何年か前に鉄男さんの日めくりを買って以来、かーちゃんは彼の絵のファンになって、いつかボクらの絵を描いてもらおうと思ってたんだって。

でも鉄男さんが在廊してるって日に行ったけど、彼は画廊にはいなくて、絵の制作を依頼することが出来なかった。でもその日、とーちゃんは展示されていた作品の中にこの絵を見つけた。
『この痩せっぽちな貧乏神っぽい感じといい、怖い目といい、うちにやってきたばかりの頃のジローにそっくりだよね。』
とーちゃんはこの絵の前に立ち止まって、ずっと眺めていたらしい。

次の機会こそ、直接お会いして絵を描いてもらおう!
とーちゃんとかーちゃんはそんな風に思ってたんだけど、その願いはついに叶わなかった。鉄男さんは去年のクリスマス、突然天国に旅立ってしまってたんだ。

とーちゃんはその知らせを聞いて、すぐに"あの絵"を買うことに決めた。でも、残念なことに鉄男さんのサイトにはSOLD OUTの文字。とーちゃんはもう鉄男さんに会えない悲しみと、あの絵を手にすることが出来ない残念さを胸に暗い顔をして家に帰ってきた。

 

いつものように玄関までお出迎えに出たボク。
とーちゃんの足に絡み付きながら、ボクはとーちゃんをダイニングテーブルの方へと誘導した。そして...

『とーちゃん、ホラ、見て!』

『えっ?』

f:id:Noranekojiro:20171208112739j:plain


かーちゃんがひと足先に買ったのさ!
ね、素敵だろ?あの日のボクにそっくりだろ?

とーちゃんはボクを抱き上げて、ギュッとして、ペロペロとボクの顔を舐めた。
違うよ、とーちゃん、ボクじゃない。
かーちゃんにお礼を言わなきゃ!

キッチンで夕ご飯を作ってるかーちゃんは『エヘヘ、びっくりした?』
照れ臭そうに笑ってた。

f:id:Noranekojiro:20171208113010j:image