みかんの一大事

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ニンゲンは人を見た目で判断するらしいけど、ボクらネコの目はニンゲンほどは良く見えないんだ。正しく言うと、動きのあるものは蚊1匹でも見逃さないけれど、動かないものはほとんど見えていない。テーブルから落ちてくる食べこぼしの魚は見えるけど、床に落ちた魚は見つけるのに苦労する。
じゃ、何で判断するのかって言えば、匂いと音なんだ。

とーちゃんにはとーちゃんの、かーちゃんにはかーちゃんの匂いがあって、とーちゃんの歩く音とかーちゃんの音は違う。それでとーちゃんとかーちゃんを見分けることができるんだ(嗅ぎ分け&聞き分けられる)。

今朝、みかんがケージに入れられて家から出て行った。
何だかイヤな予感がしてケージの周りをぐるぐる歩き回ったけど、とーちゃんのクルマに載せられて出て行ったんだ。お昼を過ぎても帰ってこない。夕方になっても...f:id:Noranekojiro:20171207144912j:image

夜になって、やっとみかんのケージが帰ってきた。
フタが開いて中からみかんが出てきた...って思ったら、出てきたのはみかんじゃなかった。首にエリザベスカラーを巻いて、顔がよく見えないってのもあるけど、匂いが全然違う別の子猫だった。
『とーちゃん、このネコ、みかんじゃないですよ!』

ボクは必死で訴えたけど、とーちゃんはそのネコをストーブのそばの箱に入れて毛布を掛けた。ボクはその子に近づいてもう一度匂いを嗅いでみた。消毒液の匂い...みかんの匂いとは全然違う。

ボクはその子に向かってシャー!って威嚇した。
その子はヨロヨロと立ち上がり、壁の隅っこに隠れて小さく震えていた。
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とーちゃんは怖い顔をして、ボクを抱き上げ、サンルームに閉じ込めた。
えっ?どうして?ボクはどうしてこんな目に遭うのかが全く理解できず、ニャオーンと鳴いた。

30分ほどサンルームに閉じ込められた後、ボクはあったかいリビングに戻された。するとさっきの子がフラフラとボクに近づいてきて、小さな声で言った。
『ジロちゃん、あたちでしゅ。みかんでしゅ。』
ボクはみかんの声にびっくりして涙目の子ネコの匂いを嗅いでみた。ん?あれ?

ボクの前で涙目になってるネコは、確かにみかんだった。
そうか、今日、彼女はセンセイの病院で避妊手術を受けたんだ。f:id:Noranekojiro:20171207145049j:image

ボクはみかんに謝って、彼女をソファに連れて行った。
エリザベスカラーがあって思うように座れないみたいだったので、柔らかいブランケットの上に彼女を座らせ、両前脚でみかんの顔を挟むように座ってペロペロと毛繕いをしてあげた。
ホッとしたのか、みかんはすぐに眠った。ボクは眠ってる彼女の顔をずっと舐め続けた。麻酔が切れ始めてお腹の辺りが痛むというので、僕は彼女のお腹に手を当てて"手当て"をしてあげた。
しばらくするとうり姐さんもやってきて、みかんのそばに座ってくれた。
夜中にみかんがエリザベスカラーを巻いた首筋が痒くて後ろ足で掻こうとするんだけど、カラーに当たってポンポンという音がするばかり。
ピーって悲鳴をあげるみかん。ボクはエリザベスカラーの内側に鼻先を突っ込んで噛み噛み。
今夜は一晩中付き添って看護士になってあげようと思う。f:id:Noranekojiro:20171207145124j:image