ジローはこ
9月も後半になって、夜になると窓が閉じられるようになった。
みかんとの網戸越しの会話も部屋の明かりが消えてからは朝までお預け。そしてカヤックのベッドも少し寒くなってきたので、風が当たらない窓の下のベンチで眠ることにした。
それでも朝は寒くて、日の出前から早くお日さまが顔を出さないかなぁって、新しく出来たウッドデッキの縁に座って東の空を眺めるのが習慣になった。
10月になったある朝、かーちゃんがベンチの上にダンボールの箱を置いてくれた。
底にはかーちゃんの着古したフリースが敷かれていて、蓋には「ジローはこ」という文字とボクの似顔絵が描いてあった。
ボクはほとんど一日中、この「ジローはこ」で過ごした。
もちろんホントに暖かかったのだけど、一番に暖まったのは体じゃなく、ココロだった。