誘惑
かーちゃんがお庭でのガーデニングから戻った時、サンルームのドアが半開きになっていた。サンルームはとーちゃんの手作りだし、木で出来た窓やドアなので、イマイチ建て付けが悪いみたいだ。
窓枠に勢揃いしてかーちゃんのお仕事の様子を眺めていたボクら。うり姐さんが真っ先にドアが開いていることに気付いて、ウニャァ〜!とヨロコビの声を上げながら外に出て行った。そう、今ではお外に出ることはないけれど、ちーちょ兄さんは外と中を行き来してた"半ソトネコ"だったので、時々一緒にお外に出ることもあったみたいだ。
あまり気が進まないけど、弟子のボクが後に続かないわけにはいかないので、ボクも外に出た。10月以来だから半年ぶりのお外。何だか懐かしい感じで、お外の空気を胸いっぱいに吸って、ウッドデッキをゆっくりと歩いた。
でも開放感に浸ることが出来たのは、ほんの数分。
サンルームの窓から心配そうにボクを見てるみかんと目が合った瞬間、ボクは今、ここにウナギがやってきたらどうしよう?このまま二度とお家の中に入れなくなったらどうしよう?そんな気持ちになって、ちょっとしたパニックになってしまった。
『あっ、ドアが開いてる!うりとジローが脱走しちゃったかも!』
家の中でかーちゃんが慌てている声がした。ボクは思わず大声で叫んだんだ。
『ニャオ〜ン!(僕はここにいるよ〜!)』
パニックになったボクは、気が付いたらハイビスカスのプランターに置物のように座ってた。もう二度とお外には出るまい。